放送14年目を迎えた「KISS & SMILE」の森口博子に、「JAM PUNCH!」
「The BAY☆LINE」などの番組を担当してきた森久保祥太郎。
ベイエリアの金曜日を盛り上げ続ける2人が、ラジオについて語り合った。
リ ス ナ ー と は 親 戚 気 分 !?
ーラジオDJとして最初の仕事は?
森口 17歳のときにDJを務めた、東海ラジオの「博子のPAOPAOステーション」です。放送作家が目の前に座って私の話に頷いてくれたり、ディレクターがスタジオのサブからガラス越しに盛り上げてくれたり、喋りやすい雰囲気を作ってくれたことを覚えています。ラジオの現場って温かくて楽しいなっていうのが第一印象でしたね。
森久保 声優として出演した作品関連のラジオ番組をやっていた僕が、はじめてラジオDJとして番組を担当したのが27歳(2001年)のとき。BAYFMの「MOZAIKU NIGHT」です。声優という肩書きを抜きにしたところで、勝負をしてみたいなと思って。FMラジオ局はリスナーの幅が広いので、当時は緊張しました。
森口 ラジオって凄くパーソナルな世界で、「みんな」じゃなくて「たくさんのあなた」に向けて語りかけているような感じがしませんか?リスナーとの距離が近い分、嘘も格好もつけないし、上辺だけの言葉を並べても見抜かれちゃう。だからこそ、飾らず1人の人間として向き合っている感覚があります。
森久保 めちゃくちゃわかります。あと、23年間もDJをやっていると、リスナーの人生が垣間見えてくる。高校時代、「バイク乗りの彼氏にあげるプレゼントは、どんなのがいいと思いますか?」なんてお便りをくれたリスナーから、「今度、結婚することになりました。結婚式で森久保さんの曲を使ってもいいですか?」「子供が生まれました!」と報告があって、番組に年賀状を送ってくれたり。もう親戚気分ですよ(笑)。
森口 BAYFMのリスナーって本当に温かいと思うし、番組を通じていろんなドラマが生まれてきたのを目の当たりにしてきました。たとえば、離婚を考えている女性の相談に「きちんと話し合ったほうがいいよ」と答えたら、旦那さんも番組を聴いていたみたいで「番組を機に夫婦で話し合って、よりを戻しました」と報告があったんです。互いに共感し合うことで、リスナー間でもファミリー感が生まれるのも、ラジオのいいところですよね。
転 機 と な っ た 東 日 本 大 震 災
ーラジオDJとして、最も印象に残っている出来事は?
森久保 2011年3月11日に発生した、東日本大震災のときですね 。「BAY LINE GO!GO!」の生放送を控え、ちょうどスタジオ入りしたタイミングで地震が起きました。一度はビルの外に避難したものの、情報アナウンサーが1人スタジオに残っていると聞き、27階まで階段で歩いて戻ることになったんです。4階くらいで心が折れかけたけど、そこは必死でしたね(笑)。その日は結局、4人くらいの喋り手が交代しながら、入ってきた情報を淡々と伝えるということを朝まで続けました。リスナーが欲しい情報を提供できているのか、この情報はみんなの役に立っているのかという迷いはありましたが、明け方になって「森久保さん、お疲れ様です」「ラジオ、ずっと聴いています」といったメールが届きだして「あぁ、やってよかった……」と思えました。森久保と名乗らずに放送していたんですが、わかる人にはわかったみたいです。
森口 私はまさに、森久保さんのラジオに救われた1人なんです。地震発生時は成田空港のサテライトスタジオ※で「KISS & SMILE」の生放送中でした。混乱のなかバタバタと放送が終わり、16時に成田空港を出ましたが、帰宅できたのは明け方の4時でした。途中、コンビニに寄っても食べ物がなく、不安でたまらなかったんですが、ラジオからずっと森久保さんの「不安だと思うけど、落ちついて」って声が流れていて。まるで自分に向けて「大丈夫だよ」と言ってくれているような安心感があって、本当に助けられました。
※…成田エアポートスタジオ「SKY GATE」(~2019年3月)
森久保 当時はインターネット番組やSNSなど新しいメディアが出てきて、新聞やラジオといった旧来のものは廃れると言われていました。実際、僕もそういう話を耳にしたことがあって、イライラしたこともありました。でも、この震災を機にラジオに対する認識は変わったと思うし、僕もラジオDJとして地に足が着いたと感じます。
森口 震災後、番組をどうするか、迷った末にいつも通りで行こうという結論になりました。優先して届ける情報があるん じゃないか、リスナーの方々にどう思われるか不安はありましたが、「福島の避難所から手巻きラジオで聴いています」 「普通に声を届けてくれてありがとうございます」といった声が届いて、救われる思いがしました。これが私たちの役割で、今は自分たちにできることをやろうと思えたんです。
森久保 震災後はいろんなDJの番組を聴いて、みんなどう震災と向き合っているのか、学ばせてもらいました。特に印象に残っているのが、先輩DJの門脇知子さんが言っていた「心を向ける」という言葉。被災地や被災者の方々に心を向けることが最初の一歩だと。この言葉が凄く刺さって、今や僕の座右の銘になっています。
森口 森久保さん、今年1月の能登半島地震の際もXに「心を向ける」ってポストしていましたよね。東日本大震災でもうひとつ印象に残っているのが、震災から3ヵ月後の6月の公開生放送の場でのこと。石巻市の避難所から、「博子さんの歌声に元気をもらいたくて」と会いに来てくれた方がいたんです。まだ状況が落ち着かない中、遠路はるばる公開ライブを観に来てくださった方の思いと行動力に心が震えて。逆に私の方が元気をもらいました。
自 分 の 言 葉 を 大 事 に す る 1 年 に
ー今年のラジオDJとしての目標は?
森久保 自分の言葉を大事にする1年にしたいですね。ここ数年間の反省でもあるんですが、コンプライアンスや自分の置かれた立場を気にし過ぎて、小さくなってしまった感がありました。僕の番組では時事ネタを扱うから、当然、発言には責任をともないます。臆することなく自信を持って喋るためにも、もっと勉強しなければならないと思っていて。気にし過ぎてしまうのは、自分の弱さのせいなんですよね。
森口 いろんなことを気にし過ぎて、優等生発言をしてしまうこと、ない?私はそういうときの嘘っぽい自分が凄く嫌なんです。
森久保 ありますね。教科書を読んでいるような感じがするんですよ。
森口 わかる!ちなみに私は番組で「2024年は脱・ポンコツ」宣言をしたんだけど「ポンコツじゃないと博子ちゃんじゃない」とリスナーの方々から言われちゃって(笑)。今年も普段着感覚で聴けるラジオを目指します。
森久保 愛されているなぁ(笑)。
毎週金曜日 13:00~15:48
DJ:森口博子
radiko:KISS & SMILE
番組公式HP:KISS & SMILE
MAIL:kiss@bayfm.co.jp
X:@KISS78MHz
毎週金曜日 21:00~22:56
DJ:森久保祥太郎
radiko:森久保祥太郎の今週わず
番組公式HP:森久保祥太郎の今週わず
MAIL:was@bayfm.co.jp
X:@was78MHz
Text:Fuka Sasahara
Photo:Kei Katagiri(Lingua Franca)