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オナニーマシーン・イノマーに捧ぐ。生きること、死ぬことについて考える 火曜『シン・ラジオ』

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火曜日の『シン・ラジオ』は文系CLUBラジオ、3月28日(火)パートナーに平成ノブシコブシ徳井健太さんを迎えての放送です。ゲストは性春パンクバンド、オナニーマシーンのリーダー・ボーカルで元雑誌編集者のイノマーさんの奥さんである、ヒロさん。2019年に亡くなったイノマーさんの生きざまについて伺いました。


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鈴木おさむ(以下、鈴木) 徳井君も結構音楽を聴いていますよね。
徳井健太(以下、徳井) はい、ロックとか大好きです。
鈴木 今日はオナニーマシーンのボーカル、イノマーさんの奥さんであるヒロさんを迎えています。
ヒロ よろしくお願いします。
鈴木 このバンドはもう伝説ですね、メチャクチャ有名です。お亡くなりになられて3年経ちましたか。もしかしてテレビでも見た方もいるかもしれませんが、「家、ついて行ってイイですか?(テレビ東京)」という番組で、あれはイノマーさんのお葬式の日ですか?
ヒロ そうですね、はい。
鈴木 お葬式の日で、ヒロさんと僕の友達の三井君が下北の街を歩いていたら、たまたまその番組のカメラに話しかけられて。しかもポップな恰好をしていて、実は葬式だということで。で「どういうこと?」となって、それがイノマーさんだったと。
徳井 すごいですね。
鈴木 またそれで、テレビ東京を辞めた上出遼平くんというかなりクレイジーなディレクターさんがいます。『ハイパー ハードボイルド グルメリポート』という番組を作っていて。
徳井 あれ超面白かった。
鈴木 彼がまたイノマーさんと関係があったんですよね?
ヒロ そうですね。
鈴木 彼はイノマーさんが病気になってから追っかけてるんですけど、あれは個人的にですか?
ヒロ 個人的にです。
鈴木 すごくない? どこで放送されるかもわからず撮影してたら、自分の局の番組で取材していて、それとくっつけて放送しようということになるなんて。
徳井 そうですね~
鈴木 それでイノマーさんがかかった癌というのは……
ヒロ 口腔底癌というものでした。治療に舌を切ったんです。
鈴木 ミュージシャンとしては、舌を切るというのは歌えたくなるということですよね。
徳井 元通りには厳しいですよね。
鈴木 そこで亡くなるまでをずっと追いかけていって。僕初めてです、人が死んでいく姿を番組で見ていくのは。あれを流したテレビ東京もすごいし、話題になったよね。それでイノマーさんの本をヒロさんが編集したんですよね?
ヒロ はい、「BAKA IS NOT DEAD!! イノマーGAN日記2018-2019」(国書刊行会)という本です。
徳井 ある意味写真集みたいですよね、そんな印象でした。
鈴木 イノマーさんが癌になってからの日誌というか日記帳と言えばいいんですかね。
ヒロ そうですね、クロッキー帳に書いていて。
鈴木 これなかなかすごいんですよ、見てるとつらいです。
徳井 再発の時から、一気に文体変わりましたよね。
鈴木 7月18日が1ページ目なんですけど、「がんを宣告された、どうなっちゃうんだろう、誤診であってほしい、誰から話そう」というような話からはじまります。それで手術して再発、亡くなる直前までですねこれは。
ヒロ そうですね。
徳井 読んでいって、進むにつれてどんどん薄くなっていって、最後に綺麗な一言が書けるわけでもなく終わっちゃうじゃないですか。それがリアルだなと思いました。
鈴木 ドラマだと最後にかっこいい長文書いて終わるけど、このリアリティ! 今日は3時間かけてイノマーさんの生きざまを紹介し、イノマーロックフェスというのが去年行われたのですが、フェスに参加してくれた方々の曲をかけたいと思います。それで生きることとか、死ぬこととか、『シン・ラジオ』らしく考えていきたいと思います。
徳井 『シン・ラジオ』ですねー(笑)
鈴木 4時からやることじゃないよね(笑)、でも自分が死ぬときとか、考えますよね。
徳井 あがく方がいいか、さとった方がかっこいいのか。イノマーさんはあがいていてカッコいいと思いました。

 

夕方でお子様も聞いているかもしれませんが、今日はトリビュートということでちゃんとオナニーマシーンのバンド名は放送で言います。しかしオナニーマシーンの曲のタイトル・・・放送コード的に7割以上かけられないものばかりだったので、鈴木さんが厳選した名曲をお届けしました。

イノマーとの出会い
 




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鈴木 イノマーさんと出会いについては、ヒロさんが元々ファンだったんですよね。
ヒロ 2010年の11月に初めてライブを見たんです。パンクは聴いていたので、行く前に下調べなく。
鈴木 見た印象はどうでした?
ヒロ 一目ぼれしたんです。イノマーの全裸パフォーマンスを見て。キラキラ輝いていました。
鈴木 当時イノマーさんはギリギリ40代で49歳くらいかな?
徳井 49で全裸パフォーマンスできないですね(笑)。若かりし頃ならできますけど。
鈴木 そこからどうお付き合いを?
ヒロ 最初は公開アドレスにメール送ったんです。人生相談というか、お菓子の量り売りの会社にいたので、仕事の悩み、対人関係とか。そしたらメールは返ってきてうれしくて。
鈴木 そこから?
ヒロ そこから1~2往復して終わったんです。翌年ライブに行って、打ち上げに参加して初めて話したんです。それでメールの話をしたら「覚えてる~」というんですけど、絶対覚えてないだろうなって(笑)。でもそこから飲みに行こうとなって。
徳井 え、2人で? パンクバンドだなー(笑)。でも昔は打ち上げにファン呼ぶとか普通でしたよね。けっこうワイワイしてたイメージありましたけど。
ヒロ そうですね。
鈴木 それでどこで恋に落ちるんですか?
ヒロ 私はずっとファンだったのですでに落ちてるんですけど、イノマーはもてたので、何人かいたんですよ女性が。それで順番待ちをしていたんです。
鈴木 なるほど! その時に立候補してもだめなんですよね。
ヒロ そこから2~3年後にやり取りするタイミングが合って。出会って5年目ですかね。 そのとき再立候補したら、ちょうどその時彼女がいなかったみたいで。
鈴木 付き合おうみたいな言葉はあったんですか?
ヒロ なんとなく付き合い始めました。一切言葉にしない、すごいシャイな人だったので。 それが2015年です。
鈴木 亡くなられたのが2019年12月だから、そこから約5年間の激しいお付き合いになるわけですね。
ヒロ そうです(笑)
徳井 お付き合いされてから病気が分かるまで1~2年?
ヒロ 正確に言えば、お付き合いしたときにアルコール依存症、だったのでほぼ病気でした。
徳井 それを支えながらお付き合いをしていたとは、献身的!

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生死をかけた「お付き合い」の始まり
 



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鈴木 イノマーさんとのお付き合いが始まりましたが、結婚ではなくどんな形だったんですか?
ヒロ 事実婚みたいな感じですね。
鈴木 それでアル中の状態だったとのことで、どのくらいの重度でしたか?
ヒロ 3回くらい救急車で運ばれてやめたんですけど……
鈴木 やめられたんですか?
ヒロ やめられましたね。それまでは寝ているとき以外、水のように朝昼晩ずっと飲んでました。お酒がないと手が震えたりとかも。
鈴木 それはお付き合いするにあたり、ヒロさんも向き合ったところなんですか?
ヒロ 最初はそこまで深く付き合うつもりなかったんですが、途中から体調が悪くなってきて、見捨てられなくなったというか(笑)
鈴木 どう話し合ったんですか?
ヒロ この先このままでは一緒にいられない、やめなければという話をしました。それでやめたような感じでしたが、隠れて最後飲んだっぽいですね(笑)。
鈴木 癌が発覚したのはいつですか?
ヒロ 2018年7月です。
鈴木 2015年に出会っているんだから、アル中うんぬんがあって1~2年後に癌か。じゃあアル中から立ち直った時期はあったんですね。
ヒロ ありました。1年ちょっとくらいは元気でした。
鈴木 と思ったら今度は癌。その1年ちょっとはどうでした?
ヒロ もうすごい楽しかったですね。本人の目も変わったし。周囲も「俺たちの好きなイノマーが戻ってきた」と。それで20周年にむけてライブやろうというタイミングでした。
鈴木 楽しい思い出は?
ヒロ 旅行に行ったり。前は酒飲んでいた時は昼の3時でつぶれていたし、話したことも覚えていないんです。それが次の日もちゃんと覚えてるって(笑)
徳井 最初から困難な状況だったから、普通なのに幸せ感じちゃったんですね(笑)
鈴木 俺、コロナになってずっと味覚がなかったんだけど、たまに戻るんですよ。ご飯の味が戻ってすごく幸せを感じました。病気ってそんな感じですよね、当たり前を奪う。そこからどうやって病気に気付いたんですか?
ヒロ 2018年1月くらいに、口内炎がずっと続いているって言ってたんです。弱音を吐かない人だったから、今思えば結構長い間で来てたのかなと思うんですよね。
鈴木 俺も口内炎があまりにひどくて、病院に行ったらそれが帯状疱疹だったんです。口内炎の痛みがすごい苦しくて。おそらくイノマーさんも怖くなったんでしょうね。
ヒロ そうだと思う。

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そのタイミングで江頭2:50!?

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鈴木 口内炎が長くなり、それで癌が見つかってステージ4だったんですね。お医者さんは何か言ってましたか?
ヒロ すぐ手術ということでした。そのあと抗がん剤、放射線の治療をしていきましょうと。手術は舌の3分の2を切除するというもので、リンパ転移部分も切りました。
鈴木 癌日誌では7月18日に宣告の話が合って、「これからどうなっちゃうんだろう、朝起きてガンを受け入れられない自分がいる」、それで7月20日に「口腔底癌といわれ、舌を切る手術をする」とありますね。病室出て家に帰るまで、何か話しました?
ヒロ 放心状態で、話さなかったですね。
鈴木 僕も妻が初めて流産した時、迎えに行ったらすごい泣いていて、タクシーにも乗りたくないということで歩いたんです。でもなんて言ったら分からず、言葉が出なかったですね。
徳井 大丈夫とか言えないですよね。
ヒロ 癌と戦っていこうと切り替わったのは峯田(和伸)君から電話があったときです。彼には公表前に伝えてあったので、それで峯田君から言われたことでゲラゲラ笑ってたんです。
鈴木 へえ。
ヒロ そこから声が変わって、それは日記本にも書いてありますけど「イノマーさん、よかったですね」と峯田君が言ってくれたんです。「こっからですよ、ここからじゃないですか」って。
鈴木 病気からの復活フェスがあったじゃないですか? あの時峯田君が変わらず煽るんだけど、それがイノマーさんの活かし方だと感じました。
徳井 病人ではなく、パンクロッカーとして接したということですね。
ヒロ みんなそうでした。イノマーの周りは誰も病人として扱わなかった(笑)
鈴木 そして手術。江頭2:50からもメールが届くとあります。
ヒロ そうですね、江頭さんとも昔から交友がありました。
鈴木 江頭さんとの関係が深くて、すごいですよね。亡くなった時間が2:50なんですよね。
徳井 そこが一番泣けましたね。この日誌にヒロさんの思いは書いてないじゃないですか。でも死んじゃったときに泣いて「2:50」だねと言ってまた泣くところが、つらかっただろうなと。
鈴木 その時の声がきこえるんですよね「あ、2:50だ」って。ヒロさんが気が付いて、ちょっと笑うんです。
ヒロ (笑)
鈴木 話は戻りますが、手術~入院となったとき振り返ってどんな気持ちですか?
ヒロ イノマーは元々浮き沈みない人でしたが、歌えないとなると精神的にはきてたと思います。食べられないのもそうですし。1カ月入院してました。
鈴木 痛いんですよね、口の中は。手術してすぐ会えたんですか?
ヒロ 5日間ICUにいて、そこから出た時に話したんです。
鈴木 舌を切除してかなり表現とか不安があると思いますが、最初の言葉は?
ヒロ それが私は仕事抜けて来たんですが、時間が遅れちゃったんです。そしたら「遅いよ馬鹿野郎」って(笑)
鈴木徳井 (笑)
ヒロ もう信じられないと思って。ふざけんなよと。喋れる、聞き取れたという嬉しさと感情が入りまじった状態でした。 

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番組中では、銀杏BOYZ、サンボマスター、ガガガSP、氣志團、四星球、Theピーズなど、最高にかっこいい曲が流れました。みなイノマーさんの大ファンで、深くお付き合いのあった方々ばかりです。「アーティストの意図を超えて、同じ言葉でも誰に向かってどう歌うかで、その受け止め方がまるで違う」という鈴木さんの言葉と共に、曲の聴こえ方も深まっています。

イノマーの最期から考える、「癌患者の近くにいる人」の癌との向き合い方



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鈴木 そのあとリハビリされたんですよね? そこから転移していたので抗がん剤と放射線治療。日記にもありますけど具合悪そうですね。
ヒロ しんどそうでしたけど、何もできないので……。リンパが固くなるので、マッサージするくらいでしたね。
鈴木 そういう治療しているときに、近くにいる人がすべき大切なことは何ですか? 僕も父が癌になって、お見舞いに行ってなんて言ってあげるのが正解なのかわからなかったんですよね。
ヒロ いつも通りが一番ではないですかね。変に病人扱いされたくなかったようなので。まあ、イノマーの周りは病人扱いするような人はいなかったですけど(笑)
鈴木 でも近くにいる人が冷静にしなきゃいけなくて、それができないときは?
ヒロ イノマーが癌だと分かったとき「別れるなら今だよと」いわれたんですよ。それで「なんで私はこの人と一緒にいるのか」というのを改めて考えました。好きという気持ち以外に、イノマーに対して面白いと思う好奇心が一番強くありました。
徳井 もう一つ先のイノマーを見られるなら、一番近くがいいと?
ヒロ この人の最後がどうなっていくのか、見届けたいという気持ちが強かったです。
鈴木 病気になって短い期間に色々あって、最期に見送れましたね?
ヒロ 最期までそばに入れたのは幸せでした。ただ強烈な喪失感は、葬式が終わったときにきました。みんな帰るときに、ふと「一人になるんだ」ということに気づいて、倒れそうになりました。それまで涙は出なかったのですがブワッと出てきて、峯田くんが「大丈夫大丈夫」って言ってくれたんです。あんまり記憶がないんですが、そこからダメになりそうなときに峯田君の声が聞こえてくようになりました。
鈴木 亡くなってから葬式まで怒涛のようにやることがたくさんあって、葬式に来た人に気を遣わなきゃいけないし、それどころじゃないんですよ。それで僕は帰りの車で悲しみが来ましたね。
ヒロ そうなんですよね。
鈴木 葬式はお祭りなので、まだ気がもつんですよ。いなくなったときに、ふとやってくる。
ヒロ それまでイノマーに動かされてたというくらい、動けていたんです。葬式までの手続きとか。で終わったときに抜けていったような不思議な感覚があって。
鈴木 遠隔操作(笑)?
ヒロ 本当ですね(笑)

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この後、話題は手術後のライブに向けた話から、イノマーさんの亡くなったときの話などへと続きます。
シン・ラジオは4月にちょうど放送1年。ようやく番組らしい形がきちんと出せるようになったと鈴木さん、徳井さんも感慨深そう。そんな1周年の回を迎えられてイノマーさんに感謝、リスナーの皆様に感謝です!
「これぞ『シン・ラジオ』」という放送内容はradikoでチェック!

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鈴木おさむ

1972年生まれ。千葉県千倉町(現・南房総市)出身。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。人気番組の構成を担当。映画、ドラマの脚本や舞台の作演出、小説の執筆など、さまざまなジャンルで活躍している。

Illustration:TONDABAYASHI RAN

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毎週月~金曜日16:00~18:54(金曜日は18:42まで)

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