三代、四代目は当たり前!? 水の城下町で老舗巡り
ますます秋の深まりを感じられるようになったこの頃。美しい景色と美味しい食事を求めて、今回は水郷の町・小見川にやってきました。地域の見どころを紹介してくれるのは、ベイエフエムⅮJの“島ちゃん”こと島村幸男さんです!
「小見川周辺はベイエフエムの仕事でもよく来ます。露地栽培の田園風景が特徴的で、車で走ると色んな作物が育っているのが見えて、来るたびにワクワクしますね」
今回はまず半世紀以上にわたり国内生産トップクラスを誇るマッシュルーム工場を見学。その後訪れた食堂、美術館、酒蔵などいずれも何代にもわたって経営し、地元を拠点に地域内外に愛されてきた老舗ばかり。いつにも増して歴史を感じる散歩となりました!
芳源(よしもと)マッシュルーム

まず散歩の最初は、小見川駅から数キロ南に足を延ばしたところにある「芳源マッシュルーム」へ。こちらは1967年に創業した、日本国内では最も古いマッシュルームの生産者の1つなんです!
「ここはレポートの仕事で来たことがあります。あまりに美味しくて、レポートの後にまた買いに来ちゃったんだよね~」
と島ちゃんも絶賛のマッシュルームは、香り良く肉厚で美味しいダシが出るのが特徴。「色はホワイト種、ブラウン種がありますが、うちでは生産の6割くらいをホワイト種が占めています」。そう話すのは常務取締役の菅佐原純子さん。
事務所でマッシュルームの生産について説明を受けた後、菌舎とよばれる生産プラントを見学させて頂きました。
「通常のパックになるサイズのほかに、約10cmもの大きさがあるジャンボマッシュや、最大18cmにもなるギガマッシュも生産しています」と菅佐原さん。ギガマッシュはジャンボマッシュの100分の1くらいの確率でできるそうですが、なぜできるのかはまだわかってわかっていないとのこと。
たくさんのマッシュルームを眺めているうち、お許しをいただいて島ちゃんはマッシュルームのひとつをパクリ。
「このホロホロとした触感と、独特かつ芳醇な香りがたまらない!生でも全然食べられちゃいますね」
以前ギガマッシュを頂いたことがあるという島ちゃん。そのときはマッシュルームステーキにして食べたそうです。こちらの2022年のグループ全体生産予定量は3800トンにも及ぶそうで、日本国内ではトップクラス。親子3代でここまで発展させてきたパワーに脱帽です!


夢紫(ゆめむらさき)美術館

さて島ちゃんが次に向かうのは美術館なのですが、どこか風情が違います。
表向きは「谷屋呉服店」なのですが、入ってすぐ左に美術館入口となる漆黒の扉が。漆喰の壁の厚さは洪水対策も考えられて60cm以上あり、重厚で荘厳な雰囲気が出ています。
迎えてくださったのは、六代目儀助である店主の渡邉幸彦さん。「寛永元年から150年以上呉服店を続けていたのですが、そこへ25年ほど前に美術館を併設しました」とのこと。土蔵は築120年のもので、保存状態もよく国の登録有形文化財(平成11年8月23日登録)になっています。
かつては土蔵に保管した反物を取り出し、店頭でお客様にお渡ししていたそう。「それを改装して今は貝の染料『貝紫』をテーマに、貝紫染色による『江戸友禅染め』の着物・帯・紫絵額・正倉院復元織のほか、絵や染織工芸品を収蔵し、私設染色美術館としてオープンしました」
中に入った島ちゃん。展示されていた紫外線により発色する貝紫染(真綿紬糸)にうっとり。「これが貝紫! きれいな紫色だな~」
貝紫の歴史は4000年前の縄文時代まで遡るそうで、紐解いていくとクレオパトラも使っていたとか……。「すごい歴史だよね。それにしてもここにある絵の美しさ。なんともいえない雰囲気がある」と感動の島ちゃん、しばらく一つひとつの展示に見入っていました。


魚平食堂

マッシュルーム農場と美術館見学を終えてそろそろランチタイム。島ちゃんが次に伺ったのは海鮮食堂の「魚平食堂」です。こちらも島ちゃん御用達のお店で、店内には以前島ちゃんのサインも掲げられています。
「おすすめなのは海鮮丼。2合のご飯と16種のネタがあり、とにかくボリュームがすごい! ネタも新鮮で美味しいから、山盛りなのに普通に食べられちゃうんだよね~」
ほかにもエビフライやアジフライなどもビッグサイズ。「県内をはじめ岩手、壱岐、天草などなど、各地の漁師さんにいいネタが上がったときは連絡をいただけるようにしています」と話すのは4代目の岩瀬智洋さん。それを裏付けるように店頭の生け簀には、伊勢海老や岩ガキなど、見たこともないほどの大きな魚介類がたくさん!
「さらにお酒も豊富な品揃でうれしい!岩瀬さんは日本酒唎酒師の資格をもつ日本酒マイスターで、酒蔵に行って買い付けしているそうです」
店内の壁には数々の日本酒のラベルが貼られ、店頭にも多数の日本酒が並んでいます。「これはまだ一部で、奥にも在庫があるのでお客様が飲みたいと思うピッタリなものを探し出すことができます」と岩瀬さん。
それでもあまりに種類豊富で迷っちゃう人には、日本酒飲み比べセットがおすすめ。地域別で飲み比べたり、銘柄を固定して三酒を飲み比べることもできます。
ランチで島ちゃんがオーダーしたのは、新メニューの「シン海鮮丼」(1650円、平日限定)。これまでと同様のボリュームながら白飯から酢飯に変えたものだそうで、常連さんなどからのリクエストで生まれたメニューです。
「酢飯は酸味が強すぎず、すごく食べやすい。刺身とのバランスが絶妙」
美味い魚と酒で、最高のひとときを過ごせた島ちゃんでした。


飯田本家

次に訪れたのは明治期から清酒造りを行っている「飯田本家」です。こちらは江戸時代には利根川の水運でお米を江戸に運搬する米問屋を営んでいました。その後、地元の米を使って酒蔵を創業して現在は飯田雄英さんが5代目となっています。
「創業以来、常に新しい取り組みチャレンジする姿勢をもってきました。そのため清酒のみならず、ゆず酒、かぼす酒などのリキュールの製造のほか、地元香取産のぶどうでワインも醸造しています」と話す飯田さん。ワインは香取市特産品開発事業で表彰もされており、香取産の希少な一品としてブランド化されています。
「お酒を色々取り扱っていると一言でいっても、それぞれ製法が全く違うのでそんな簡単な話じゃないよね。清酒『惣兵衛』をフラッグブランドとして掲げている一方で、ワインやリキュールなども軌道に乗せていくなんて、代々受け継がれた挑戦へのパワーを感じるな」と島ちゃんも感心しまくりでした。
そしてただ単に酒事業の手を広げるだけではなく、“本業”の清酒は外部の杜氏は使わず、自社杜氏によるこだわりの酒造りを行っています。「杜氏任せではなく、現場で酒の資質を決めていきたいんです」と話す飯田さん。やはり色々な酒類に携わっても、清酒が一番難しいそうです。
そしてさらにブランデー造りにも着手し、こちらは現在熟成していて来年などで販売予定となる模様。まだまだ挑戦の歴史は続きそうですね!
水郷のとりやさん 須田本店

最後に来たのは鶏肉と鶏卵の専門店として、1921年に創業した「水郷のとりやさん 須田本店」です。
「ここも僕のお気に入りです。なかでも『レバーのパテ』(1134円)は絶品。家族に食べさせたら、美味しくて皆ひっくり返ってました(笑)」
専門店だけあって、店内は冷凍肉から生肉、卵の販売をはじめ、参鶏湯やチキンカレー、チキンシュウマイ、鶏ちまきのような料理加工品のほか、焼き鳥や空揚げなどの総菜まで、鶏にまつわる様々な商品が並んでいます。
ご案内いただいたのは、4代目のとなる代表取締役の須田健久(たけひこ)さん。「店舗は2006年にリニューアルオープンしました。当店こだわりの鶏肉や自然卵を召し上がっていただけるよう、カウンター席でのイートインスペースを設けています」
島ちゃんも店内で、鶏の12種類の部位を揃えた“焼き鳥のフルコース”をお手軽に楽しめる「水郷どりまるごと一本」(550円、テイクアウト540円)をオーダー。お店でも目玉超品のひとつになっています。「特に僕のおすすめは“そり”と“ボンボチ”。希少部位もあるから、ぜひ試してみてね~」
さらにメニューも豊富で、親子丼や焼き取り丼などの丼ものからガパオライス、カレー、定食まで揃っており、テイクアウトも可能。続々とお客さんが注文していました。
そして昨年創業100年を迎え、店舗向かいに工場を新設。「工場では加工から冷凍、パック、出荷まで一貫することで生産性がアップし、さらに衛生的で高品質な商品提供ができるようになりました」と、須田さんも安心・安全な食に対する高い意識を見せていました。
「工場内部の様子も中高生など地元の方が見学できるようだし、そこは透明性を持った鶏専門の地元100年企業のプライドを感じるね」と島ちゃん。今回もたくさんの焼き鳥のお土産を買って、そろそろ今回の散歩も終了です!


取材を終えて・・・
小見川は30年ほど前から、何かとご縁があって訪れてきた町。だから知った気になっていたけど、こうして散歩でじっくり巡ると意外なものや、新たな興味の沸く再発見があり、街への関心はどんどん高まっていきますね…
ここは近くの佐原と並ぶ水郷の町として知られているけど、佐原が観光的魅力を前面に出す一方で、小見川は商業地として栄えてきた歴史の深さが見えて、現在の発展に至る力強さを感じました。かつて東北の物資をここから江戸へ運んだように、今日訪れたどの場所も、この地域と全国を結ぶ役割を果たしていて、そのDNAは受け継がれているんですね。

お散歩情報

- 芳源(よしもと)マッシュルーム
住所:香取市米野井 938-1
TEL:0478-70-7515
※マッシュルームは近隣の道の駅などで販売 - 魚平食堂
住所:香取市小見川1275-1
TEL:0478-82-2137
営業時間:11:00~21:00(L.O.)
定休日:不定休 - 夢紫(ゆめむらさき)美術館
住所:香取市小見川581
TEL:0478-83-1089(谷屋呉服店)
営業時間:10:00~18:00
定休日:水・木曜日、年末年始等 - 水郷のとりやさん須田本店
住所:香取市小見川270-1
TEL:0478-82-2346
営業時間:9:00~19:00
定休日:水曜日 - 飯田本家
住所:香取市小見川178-2
TEL:0478-82-2037
営業時間:8:30~17:00
定休日:日祝日(12~3月無休)
取材・文/喜多 雅明 撮影/織本 知之

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